3話

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翌日、体調が悪いからと有休を貰った私は、すぐに近くの産婦人科を受診した。 「妊娠してますね」 全ての検査が終わった後、先生のその言葉を聞いて、まだどこか現実味が無かった妊娠が一気に現実のものになった。 「出産するかどうか、お相手の方とよく相談して決めてくださいね」 「……はい」 産まない場合と産む場合、両方の説明を受けて家へと帰る。その道中、頭の中はずっとこれからの事でいっぱいだった。 「まずは、課長に話さないと……」 まさか、本当に妊娠するなんて課長も思ってなかっただろうな。 妊娠したって聞いたら、課長は一体なんて言うだろう。あの時は責任をとるって言っていたけど、実際本当にそうなったら考えが変わる可能性は十分ある。部下と出来ちゃった結婚なんて、課長の出世にも影響あるだろうし…… 私だって、苦手意識のある課長と結婚して一緒に暮らしていくなんて想像も出来ない。 「だからって、産まない選択も……」 病院でもらったエコー写真を眺める。そこに写っているのは、まだ人間の形なんてしてないけれど、確かにお腹の中に宿っている赤ちゃん。それを眺めながら、病院で受けた説明を思い出す。 産むか産まないか――産まない場合は、今からどんどん成長するはずの、まだ小さな丸にしか見えないこの命は、私の中から消えてしまう。 一日中考えて自分がどうしたいか結論を出した私は、翌日自分の決意と共に妊娠の事を課長に話す事にした。
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