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「――それで、今後の事なんだが」
「はい」
「お互いの家に挨拶を済ませてから、会社へ報告しようと思う。引っ越しも必要だから、物件探しもしないといけない。結婚式は……お腹が大きくなる前には難しいかもしれないな。ああいうのは準備に時間がかかると聞くし」
「式は挙げなくても……」
「そういうわけにはいかないだろう。一生に一度の事だし、仕事の関係もある。それに、女性はウェディングドレスに憧れるものなんじゃないのか?」
「それは……」
確かに憧れはあるけど……結婚の理由が理由なだけに、少し迷ってしまう。
「式を挙げるにしても、恐らく子供が生まれてからになるだろう。そこについてはまた後から考えたらいい。問題はお互いの実家への挨拶と報告なんだが……」
「……?」
「お前の両親は怒るだろうと思ってな。大事な娘を結婚前に妊娠させてしまったんだから当たり前だが……殴られる覚悟はしておこう」
「殴ったりはしないと思いますよ」
うちのお父さん暴力は嫌いだし、それに多分怒らないんじゃないかな……?
「とにかく、都合のいい日を聞いておいてくれ。きちんと挨拶に伺うから」
「分かりました。――あの、課長のご実家へはいつ……」
「そうだな……近いうちにとは思っているが、また決まったら連絡する」
「はい」
「引っ越しの件も、どの辺がいいとか間取りとか考えておいてくれ。なるべく希望に合わせる」
私が頷くと、会話で止まっていた課長の手が動き始めた。それに合わせて、私も食事を再開する。
自分の両親に報告をするのは、実はそんなに緊張していない。楽観的な2人だし、何よりお姉ちゃんも出来ちゃった結婚をしたという前例があるから。
問題は、課長のご両親への挨拶と報告。課長って確か、有名大学出身だったはず。しかも、成績も上位だったって噂で聞いたことがあるし、お家も裕福なんじゃないかって話だった。だから何となく、課長のご両親はうちとは違って厳しい人なんだろうっていうイメージがある。
――結婚を反対されるだけならまだいい。元々1人で育てようと思っていたんだし。でも流石に、子供を堕ろせとかは言われないよね……?
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