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3.職員会議
…同日夕方の職員会議…
「…とクラス会でこのようなことが決定いたしました」
蘭 六花が説明を終えると、教頭が、
「そんな一部の生徒の意見に耳を貸すことはどうかと思いますが…他の先生方はどのようにお考えでしょうか?」
「はい」
と手を挙げたのは、5年2組の若手の男性担任だった。
「私はこの1年間、同じ5年生を受け持っていましたが、生徒主体で何かをする、とうことは一度もありませんでしたので、5年1組の方針と言いますか、取り組みが、一人の身障者の生徒をきっかけに、これほど団結されるものかと不思議でなりませんでした。クラス替えをする・しないは別として、その秘訣を教えてもらいたいと思います。」
教頭は何度か頷きながら、
「そのことは私も気になっていたんですよ。ぜひお聞かせ下さい。蘭先生」
「はい、それは委員長の存在だと思っています。岡野アリスさんと言いますが、彼女の母親が元看護師さんでして、身障者への接し方をお家でちゃんと教えて下さり、委員長はそれをみごとに実践しました。それを見てきた同級生がマネて同じ扱いをしてきたため、レイラちゃんが今まで受けてきたような「特別扱い」が全くなくなったことにより、孤立が起きなかった、と、私は分析しています。要は、クラス全体に広まった身障者への理解。このことだと思っています。もちろん、担任の私も知らなかったことが多く、大変勉強になりました」
と一気に話した。教頭は、
「なるほど。そうなると、逆にクラスをそっくり入れ替えれば、今の5年生全体が良くなる、ということにはなりませんか?蘭先生、いかがです?」
「私の考えでは、それには時間が足りないと考えます。というのは、今のいい雰囲気になったのは、つい最近、3学期に入ってからのことなのです。ここに来て、レイラちゃんの成績も右肩上がりとなってきていますが、それでも4年生までのお勉強がやっと追いついたレベルなんです。あと1年この状態なら、きっと皆と同じレベルになると私は思っておりますので、ここで環境を変えるにはリスクが大きいと考えます」
教頭は、
「蘭先生の言い分はわかりました。最終的には春休みでの総合職員会議で決定することにしましょうか」
「一点だけよろしいでしょうか?」
と蘭は手を挙げ、
「春休みの総合職員会議に、うちの委員長も同席させてもよろしいでしょうか?
教頭は驚いた顔で、
「一生徒が職員会議に参加するなど、今まで前例のないことだ。そんな特例など、認めるわけにはいかんよ」
と声を荒げた。
「ちょっといいですか…?」
ここで校長が手を挙げた。
「今までの話を聞かせてもらいました。蘭先生はいい生徒さんをお持ちですね。職員会議は何も隠れてするものでもないでしょう。生徒の参加を認めますよ」
「校長!」
と教頭は立ち上がり不満そうな顔を見せていたが、校長の決定は覆らない。教頭はヘナヘナと椅子に座ってしまった…。
会議が終わると蘭 六花は、このことを早くクラスに知らせようと、スキップしながら教室に向かった。
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