5.平凛の初出動

1/2
前へ
/9ページ
次へ

5.平凛の初出動

 今日は、ISDに警務部長が初巡視に来るという。ま、警務部長と言っても平凛だが…。  警察というのは、こうして時々警察署にお偉方が巡回に行く時があるが、ISD(うち)に来ることは珍しい。おそらく平凛の個人的な興味に違いない。  さすがに本部から徒歩1分だから、車は使わずに歩いてきたようだ。平凛とスーツ姿のお付きが3名入ってきた。  それとほぼ同時に、ホットラインが鳴った。  佐々木咲夜が対応する。咲夜が人差し指をくるくる回すジェスチャーを出した。ヘリが出動する事案のようだ。  あとは海か山か、又は川か…?咲夜は続いて片手で大きく山の形を作った。オレは、 「山だ!(ライ)、七海、オレと出るぞ!準備しろ!」 と告げると、 「(わたくし)も参ります」 と平凛が言い出した…。 「警務部長!それはちょっと…」 お付きの3人はオロオロしている…。 「私も行くのです。誰か靴とジャンバーをお貸しください」 咲夜が予備の靴と、ジャンバーを取り出し平凛に渡した。  平凛は履いていたパンプスを脱ぎ捨て、咲夜のスニーカーに履き替え、着ていたスーツの上にISDのロゴ入りジャンバーを羽織った。  「状況は?」 とオレが聞くと、咲夜は、 「渓流釣り客が戻らないとの連れからの通報です。谷に入って約1時間。携帯は応答なしです。ヘリはあと5分で本部に到着します!」 と言った。 「わかった。雷はシロ達をヘリポートまで頼む。乗るのは平凛と七海とオレだ!」 「ハイ!」 と言って二人は準備に駆けだした。 平凛のお付きの者達が、 「警務部長、危険です、おやめください!」 と口々に言い続けていたが、平凛が一度決めた事をやめる事はしない女だと、オレは一番知っていた…。だから、 「平凛は先に本部屋上のヘリポートに向かってくれ」 と言ったら、 「ハイ!ダンナ様!」 と駆け出した。お付きの3名は、 「え?ダンナ様?」 と言ってポカンとしていた…。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加