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ヘリが離陸すると、七海はすぐにクロ達のケージを窓にセットしだした。オレはクロに、
「ヘリには谷の上を旋回してもらうので、探してる人が正面にきたらすぐシロに声を出すように伝えといてくれ」
と心の中で伝えたら、
「わかったわ」
と返ってきた。
今回の現場は、高知市の北方にある土佐山地区だ。ヘリなら10分とかからない。オレは機長に、
「現場に着いたら、谷を中心にゆっくりと旋回してください。合図があればその時方角を知らせますので」
と伝えると、
「ラジャー!」
と言って親指を立てた。
「七海はシロが鳴いたら、その方角を機長に伝えてもらえるか?あとは直上でホバリングをしてもらうから」
「わかりました」
と、七海は言った。直後機長から、
「現場上空です。これより旋回に入ります」
と連絡が入った。
「お願いします。七海は方角だけを特定してくれ。頼んだぞ!」
ヘリは谷の上空で直径500mくらいの円を描いて旋回を始めた。半周程でシロが、
「ニャー!」
と鳴いた。
七海はすぐ、
「9時の方角です!」
と叫ぶと、機長から
「ラジャー!」
と返ってきたと思ったら、旋回体制から直線飛行に移った。
「クロ、今度はシロに真下をサーチしろと伝えてくれ。で、見つけたら、さっきと同じだ。鳴けと言ってくれ」
「了解!」
ヘリは速度をやや落とし、ゆっくりと谷の上空に差し掛かった。するとシロが、
「ニャー!」
と鳴いた!
「この真下だ!機長!ホバリング頼みます!」
「ラジャー!」
と機長は答えると、一度機首を上げたかと思うとややバックしたところでヘリをピタリと静止させた。さすがベテラン機長だ。
オレは無線を取り、
「土佐山捜索員に連絡、こちらヘリだ。要救助者はヘリの真下にいる!繰り返す、要救助者はヘリの真下だ!急げ!」
そのとき平凛が、
「ダンナ様、私は何かお手伝いすることはありませんか?」
と言ってきたので、オレは、
「警務部長はそのまま座ってていいよ。これはオレ達の仕事だからな。これからもオレ達が仕事がしやすいように、見守っていてくれな、平凛」
と言ったら、平凛は、
「わかりました。ダンナ様!」
と答えた。
七海は今の会話を聞いていて、
「室長って警務部長のダンナ様なんですか?」
と言い出した…。
「イヤ、ほら、まぁ、あれだ。もののハズミでってヤツだ…。な?平凛?」
「ダンナ様はダンナ様です」
平凛のガンコさがモロに出た言葉だ。
そうしていると捜索隊が、ヘリの真下に集まって来たので、
「何かの陰になっているかも知れん。よく探すんだ!」
とオレは機外スピーカーに流した。
直後、
「いたぞー!ここだ!生きてるぞ!大きな石が足に乗ってるから、ストレッチャーを持って来い!」
と下から声が聞こえて来た。
平凛の初出動は無事成功した。
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