5人が本棚に入れています
本棚に追加
エレベーター
1990年代初頭、まだデパートにエレベーターガールという職があったころ。
僕の兄、モテないはカノジョがいないので、イライラしながら男友達とデパートに買い物に行きました。
モテないがイライラしているのは、今日が特別な日だからです。
そう、クリスマス・イブ。
街はカップルだらけ。
なのに、芋くさい男友達とさみしくお買い物です。
この時点で、モテないは怒りのピークに達していました。
エレベーターに入ると、モテないの周りはたくさんのカップルでぎゅうぎゅう詰めになり、息がつまりそうだったそうです。
モテないの隣りにいたカップルが、イチャつきだしました。
「ねぇねぇ、今日このあとどうする?」
「え~ プレゼントくれたならいいけど……」
この時、彼氏さんの肘がモテないの脇腹にガシガシ当たっていたそうです。
彼女さんに夢中で、はしゃぎまくっていたらしく、仕方ありません。
モテないは、ドスの聞いた声で、こう言いました。
「いってぇなぁ……てんめぇ、殺すぞ!」
「ひぃぃぃ! す、すみません!」
「けっ!」
モテないは小心者のくせに、仲の良いカップルを見ると無性にイライラするそうで、ただの八つ当たりです。
この話を聞いた僕は思いました。
「兄ちゃんいつか、刺される」と……。
最初のコメントを投稿しよう!