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九秒が過ぎた。ゆるゆると瞼を上げる。
「……え」
気が付けば、俺は自分の部屋に居なかった。
知らない場所、もっと言えば、知らない屋内だった。
木で出来た壁や天井に、オレンジと黄色が混じった様な光を放つ卵型のライトが其処彼処に取り付けられている。
正面手前にはテーブルが二卓。それぞれに椅子が三脚ずつ収まっており、奥には受付の様なカウンターがあった。
しかし一番に目を引くのは、両脇にある巨大な本棚と、そこに面陳で並ぶ本達だ。現代ではあまり見ないデザイン、そうだ、ゲームや漫画に出てくる魔法書に似ている。
部屋の端には幾つかドライフラワーも飾ってあって、ライトの色のせいか全体として温かみが演出された空間だった。
マジマジと周りを見つめていると、カウンター奥の部屋から声が掛かる。
「あれ、お客さんでしたか。すいません、奥で作業をしていたものだから、気づかなくて」
声変わりしきっていないアルトボイス。
中から出てきたのは、薄黄緑の髪を持った少年だった。
「いらっしゃいませ。異世界役職店『ドッペルゲンガー』へようこそ!」
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