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「なめるなァッ」
気勢一喝、降ってきた鉢植えにオーバーヘッドキックを決めた。バリーンと砕けながら吹っ飛ぶ鉢植えを尻目に着地する。
場外ホームランを決めた野球少年とベランダから鉢植えを落っことしたおばちゃんがすっ飛んできて、怪我はありませんか、大丈夫ですかと心配された。
「いや、俺は大丈夫なんで」
それじゃ気をつけて、と、俺の方がそう告げてそこを去った。
野球少年と鉢植えのおばちゃんを責める気はない。なぜなら、原因はわかり切っているからだ。十中八九、心霊スポットで一瞬だけ見た女の幽霊だろう。
そんなの馬鹿馬鹿しいと思うだろう。ああ、俺だってそう思う。
でも、それじゃさっきのありえない球の軌道はなんだ。一度落ちかけた球がきゅいんって上がってネットを超えるか普通。
そう考えるともう、幽霊の仕業としか考えられなかった。
はあ、とため息を一つ。
もう五日、こんな調子だ。一緒に心霊スポットに行ったみんなが次々と入院して俺だけが残った日から五日、今日も今日とて俺はしぶとく元気に過ごしている。
一日目。誰もいない歩道橋の階段で見えない手に突き飛ばされ転落した。
先に言うと俺は小さい頃から親父にぶっ飛ばされ慣れているので、受け身はうまい。かすり傷で済んだ。
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