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違和感
モキが我が家に来た翌日。学校に行こうとすると、モキに後ろから呼び止められた。
「あの、猫子さん......」
「ん? どうしたの? 」
「......私を学校に連れていってくれませんか? 」
摩度はモキと過ごした時間が長いわけではないが分かった。モキは性格上、ワガママは言わないタイプだ。このことから、モキはなにかやむを得ない訳があってついていきたいと言っているのだろうか。
「......分かった、行こう! 」
「いいですか? ありがとうございます!! あなたのことを守れるように頑張ります! 」
「守れるように? 」
「あ、いえ......急ぎましょう。遅刻しちゃいますよ! 」
モキは摩度の鞄に潜り込み、シュポッと顔を出した。
「それじゃあ行きましょう猫子さん。れっつごーです!! 」
「う、うん」
摩度は、ちょっとした不安要素を残しながら、学校に向かった。
-学校-
「おはよー」
「お、猫子氏。遅かったでござるな。待ちくたびれたでござるよ」
このヲタク風の人物は、手茂 狩滞。小学生からの幼なじみであり、同志でもある。
「ああ、昨日徹夜で『ニャンニャンわーるど』を見ててさ」
「も、もしや......?」
「むふふ、ハマッた」
「そうでござろうそうでござろう! あの猫ならではの喋り方がたまらんのでござる! 」
共通の話題で盛り上がり、クラスメイトが離れていくのが感じられる。
「そうそう! あの『にゃん』っていう語尾がね! 」
すると、その話を聞いていたモキが、鞄から摩度に語りかけてきた。
「猫は語尾に『にゃん』なんて付けません」
拗ねるような口調に乗せられ、手茂の前でモキと喋ってしまった。
「いや、分かってるけどさ、それはアニメの話で」
「おや? 猫子氏? 誰と話しているでござるか? 」
「い、いやいや、独り言だよ......」
「そうでござるか。で! 3話のあのシーンでまさかの」
この調子で手茂との会話を楽しみ、授業の開始時間。いつも通りに受けて、いつも通りに終わった。
「ふう、ちょっとトイレ」
「また後ででござるな」
催してきたので、トイレに向かった。すると、クラス内で特に巨体な人物がつけてきた。
「......またか」
摩度は、カツアゲされるのを覚悟し、トイレに向かった。
-トイレ-
「よお摩度」
後ろには壁。前には、その壁に肘をついて逃げられないようにしている坂東 敬二郎がいた。
「......千円あります。今日はこれで許してください」
「いやな、今日は金の他に、もうひとつお願いがある」
おい、出てこい。そう坂東が言うと、坂東の後ろから、茶色の毛並みの猫、いや、猫魔が出てきた。
「おいそこの人間。モキ様はどこにいる? 」
「こ、こいつも......」
「ああそうさ。最初に見つけた時は驚いたぜ。喋る猫。モキっつう猫を見つけたらすげえことしてくれるっていうからよぉ、手始めに学校から捜してみたら、いたぜいたぜ白銀の猫。お前の鞄から顔を出したのが一瞬みえてよ、あいつだと思ったぜ」
「やっぱり追ってきてたんですね!! 」
いつの間にか、モキが首の後ろから出現した。
「モキ様、お帰りください。あなたは次期女王。勝手にどこかに行ってもらっては困るのですよ。もう分かったでしょう。あなたは人間の世界では生きて行けない」
モキは力一杯反論した。
「確かにそうでしょう。しかし、私はもう猫子さんという素晴らしい方を見つけました。自分の家に居ないかと言われたときは嬉しかった。しかし、同時に私のことを狙う猫魔がどんどん現れると思って、とても申し訳なかったです。でも、それ以上に」
摩度には、モキが涙をながしたように見えた。
「私を認めてくれたのが嬉しくて仕方なかった......」
そんなモキ対しても、茶色の猫は冷酷に言った。
「しかし、あなたがいなくなっては国の士気が下がる。女王不在の国は衰える一方なんです」
モキはしばらく黙ったあと、喋り始めた。
「あなた方側近は、一度も私に感情を見せなかった。私を労りはしたが、私に優しくはしなかった。そんな日々の生活が、私に確かな決心をさせたんです!! 」
モキは今一度、大きな声で言い放った。
「私は、人間の世界で生きていきます!! 」
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