異身同心

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 彼女は、いつも少しだけ早く店に来て開店準備をするから、扉が開いたら飛び出せば彼女だけと会うことができる。これが私が考えた作戦である。いたってシンプルなものだが、人間はパターン通りに行動してくれるから、成功率はかなり高いはずだ。  もうすぐ彼女が出勤する時間だ、この計画は誰にも言っていなかったから、きょうだいたちには何をそんなにガサガサとしてるんだと言われたが、どうにも止められなかった。いつでも飛び出せる姿勢で待ちに待って、そして、小気味良い音をたてて開いた扉に向かって、私は飛び出した。  明るい場所に居たのは、店主。  しっかりと目が合った。  こちらを見た瞬間、いつもは優しそうに細められている目が、カッと見開かれた。咄嗟に「話を聞いてください!」と叫ぶも人間に伝わるはずもない。  そこから先のことはあまりよくは覚えていない。ただ、必死に逃げる私を捉えて放さない目と、店内に響き渡る怒号に混じったサーッという私達を殺そうとする音が頭にこびりついて離れないだけだ。  住み慣れた我が家で最後に見たのは、次々と辺りに散らばる家族達の姿だった。  
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