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怖くて怖くてたまらなかった。殺されかけたことも勿論ではあるが、店主の人の変わり様が何よりも恐ろしかった。いつもはあんなに穏やかに料理を作り、お客様やアルバイトの人達と話す彼の口元は怒りながらも少しだけ上がっていた。
もう家には戻れない。家族ももういない。……彼女に会えない。
彼女に会いたい。
彼女に会いたい。
家族にも会いたい。
悲しい、寂しい。
彼女に会いたい。
そんなことばかりを考え、街中を歩いたのがいけなかった。もう、今居るのがどこかすらわからない。
今日は今年一番の冷え込みらしい。昨日彼女が言っていた。そうだ、アイツの体を心配してそう声をかけていたんだ。ちくしょう、寒い、寒い、日が暮れる前に今日一晩だけでも夜を明かせる所を探さなければ。
人間の足元を見つからないようにすり抜け、さらに歩き続けると、少しだけ窓が開いているアパートを見つけた。
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