第1話 CRY

4/11
前へ
/14ページ
次へ
 1コール……  2コール……  3コール……  4コール…… 「出ない、かな……」  諦めて切ろうとすると、通話時間表示の画面になる。私は咄嗟に電話を耳に当てる。 「も、もしもし?」 「……もしもし? どちら様ですか?」 「……っえ、あ……同じ部署の冴島瑞希(さえじまみずき)と言います、突然ごめんなさい」  心臓がバクバクする。私は耳がいい方だ。記憶力もいい、この声は……よく似ている。 「冴島……? あぁ、冴島さん。どうも。俺の連絡先なんて持ってたんですね」 「えっと部長に教えてもらいました」 「部長に? ふうん、そうですか。それで何か用ですか?」  どことなく淡白な感じだ。でも確認したかった。どうしても。 「あの、毒島さん。私はその、私も失敗たくさんします! でも毒島さんは違います! 悪くなんてないですから!」 「……あの、ちょっと何を言ってるのか……」 「今日怒られてたじゃないですか。でも毒島さんじゃないんですよね?」  動画だと理解してくれたらきっと……。 「……見たんですか? あの動画?」 「見ました。あの、動画のTaKeRuって毒島さんですか?」  本人は知られたくないかもしれない。でも私は知りたかった。彼がどんな人なのか知りたかったんだ。 「……会社の連中には秘密にしておいて下さいね」 「……! 勿論です。あの、私3年前からずっと見てます。すごく好きなんです!」 「それは光栄です。ありがとう、冴島」  タメ口に呼び捨て、胸がドキドキする。このままもっと話していたい。そう思った。 「毒島さん、通話アプリのリンクって知ってます? 無料で通話出来るアプリです。そこで話しませんか?」 「……いいですよ。アプリ落とすので待ってて貰えます?」 「私もアプリ落としますね」  それから一旦通話が切れる。アプリを落とした後、細かな設定をする。連絡先から彼を選択すると、TaKeRuと名前が出ていた。 その名前を押すと自然と彼が追加される。メッセージ機能も付いており彼からメッセージが届く。 『これってアレじゃないですか? 多分カップル用のアプリですよね?』  それを見た瞬間私の顔がぶわっと赤くなるのが分かる。そんなの知らなくてただ良いなと思ってただけだったから。 『すみません! そうとは知らずに。嫌じゃないですか?』 『別にいいですよ。通話します?』  その文面で更にドキドキが増す。チャンネル登録者数もそれなりに多い。そんな彼が私と電話してくれるなんて……本当に嬉しい! 『はい、しましょう』 『了解です、掛けます』  そうして少し待っていると、彼から通話を知らせる通知がくる。アイコンはYauTuberと同じギターを持った男性の写真。顔は写ってない。  通話応答のボタンを押す。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加