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1コール……
2コール……
3コール……
4コール……
「出ない、かな……」
諦めて切ろうとすると、通話時間表示の画面になる。私は咄嗟に電話を耳に当てる。
「も、もしもし?」
「……もしもし? どちら様ですか?」
「……っえ、あ……同じ部署の冴島瑞希と言います、突然ごめんなさい」
心臓がバクバクする。私は耳がいい方だ。記憶力もいい、この声は……よく似ている。
「冴島……? あぁ、冴島さん。どうも。俺の連絡先なんて持ってたんですね」
「えっと部長に教えてもらいました」
「部長に? ふうん、そうですか。それで何か用ですか?」
どことなく淡白な感じだ。でも確認したかった。どうしても。
「あの、毒島さん。私はその、私も失敗たくさんします! でも毒島さんは違います! 悪くなんてないですから!」
「……あの、ちょっと何を言ってるのか……」
「今日怒られてたじゃないですか。でも毒島さんじゃないんですよね?」
動画だと理解してくれたらきっと……。
「……見たんですか? あの動画?」
「見ました。あの、動画のTaKeRuって毒島さんですか?」
本人は知られたくないかもしれない。でも私は知りたかった。彼がどんな人なのか知りたかったんだ。
「……会社の連中には秘密にしておいて下さいね」
「……! 勿論です。あの、私3年前からずっと見てます。すごく好きなんです!」
「それは光栄です。ありがとう、冴島」
タメ口に呼び捨て、胸がドキドキする。このままもっと話していたい。そう思った。
「毒島さん、通話アプリのリンクって知ってます? 無料で通話出来るアプリです。そこで話しませんか?」
「……いいですよ。アプリ落とすので待ってて貰えます?」
「私もアプリ落としますね」
それから一旦通話が切れる。アプリを落とした後、細かな設定をする。連絡先から彼を選択すると、TaKeRuと名前が出ていた。
その名前を押すと自然と彼が追加される。メッセージ機能も付いており彼からメッセージが届く。
『これってアレじゃないですか? 多分カップル用のアプリですよね?』
それを見た瞬間私の顔がぶわっと赤くなるのが分かる。そんなの知らなくてただ良いなと思ってただけだったから。
『すみません! そうとは知らずに。嫌じゃないですか?』
『別にいいですよ。通話します?』
その文面で更にドキドキが増す。チャンネル登録者数もそれなりに多い。そんな彼が私と電話してくれるなんて……本当に嬉しい!
『はい、しましょう』
『了解です、掛けます』
そうして少し待っていると、彼から通話を知らせる通知がくる。アイコンはYauTuberと同じギターを持った男性の写真。顔は写ってない。
通話応答のボタンを押す。
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