02-02:この帝、割と陰キャ

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 当然逃げ出した前の帝は面白くはない。いや、前というより、未だ自分は帝だと主張している。  平和に見える都も、周りでは二人の帝、いったいどちらが真の帝なのかと色めき立っている。やれこちらが本物だあちらこそが本物と、言い合う声は次第に大きく変わってゆく。小さなうねりは段々と大きさを増してゆき……両の勢力がにらみ合う状態が続いていた。  もっとも――そんなことは俺にとって些末なことでしかない。  ……そう思っていた、のだが。 「ちょっと、帝」 「どうした、黒(くろ)」  いま目の前には、渦中の帝が座っている。  なんでこの帝、貞観殿(おれんとこ)に押しかけて寛いでんの。  渦中の帝……なんだよな?  帝の今の姿はといえばだ。脇息に寄りかかり、唐菓子を口に入れながら書物を読んでいる。あらかじめ人払いはしているものの、いくらなんだって寛ぎすぎだろう。  大臣達が見たら卒倒しそうな光景だ。  渦中の帝……なんだよね? 「なにやってんだあんた」 「見れば分かる通り、書物を読んでいるが」 「そうじゃねえよ! なんで貞観殿(おれんとこ)で寝っ転がって書物読んでるんだって話だよ!」
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