弐:紅一点

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* 「…何なんだよ。畜生」 行く先々に突進してくる野郎どもにうんざりしながら呟いた。 場所は変わって、ここは体育館…の壁。 男子に囲まれぬように体育館の正面の入口からは入らず、鉤縄(かぎなわ)という道具を使って外壁を登っていた。 二階の窓に(かぎ)を引っ掛け、そこから垂らした縄を伝いながら。 今日は朝から全校集会があるらしい。 朝、昇降口に人が少なかったのは、生徒達が早めに登校し、体育館に向かっていたからのようだ。 「……って、何でそこだけ真面目なんだよ」 思わず一人で突っ込んでしまった。 ここの生徒達は素行に問題がある生徒ばかりじゃなかったのか。 「それは全校集会の出欠が留年に関わってくるからですよ。 成績の評価だけだと、ほとんどが留年しちゃうらしいですからねー」 「ふん…なるほどな って、なぜそこにいる?佐武」 ふと見上げると、鉤を引っ掛けた二階の窓から、佐武(さたけ)が顔を出していた。
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