弐:紅一点

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「嫌だな」 私は秒で否定した。 「自分より弱い奴は対象外だ。 ……って、何で泣いている?」 「うう…。人生最大の難問を突き付けられた気分です……うう…」 「何言ってんだ? …あ、全校集会が始まったみたいだぞ」 さめざめと泣く佐武を無視して、私は移動した。 一階に降りてクラスのところに入ると混乱することが目に見えているので、このまま二階に居ることにする。 立ったままだと目立つので、しゃがんで、転落防止のフェンスの間から集会の様子を見下ろす。 「そういえば捜索は順調ですか?」 いつの間にか佐武が私の隣に来て、訊ねてきた。 「捜索?」 「ほら。例の刀のですよ」 どうやら佐武は父さんからそこまでの情報を聞いているらしい。 「…いや、まだ。 とりあえず校内は一通り探し終えたがな」 「え?もう一通り探し終わっちゃったんですか?」 心底驚いた様子の佐武に、私は頷いた。
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