弐:紅一点

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「ああ。 早いこと見つけ出して、こんな高校とはおさらばしたいからな」 「はぁ…。 でもまだ二日しか経ってないですよ」 「二日もあれば十分だ。 校内の部屋一つ一つ、校庭、体育館の隅々まで丹念に調べ回ったが、全く見つからなかった」 「さすが飛鳥殿。人間業じゃないですね。 …しかし目につくところにないとすると、一体どこにあるんでしょう?まさか地中とか?」 「それはないだろうな。 あの父親の鍛錬(たんれん)がいつも無茶苦茶とはいえ、重機が必要な捜索を私にさせるとは思えない。 それに何も刀の在処が“場所”であるとは限らない」 「……と、言いますと?」 「誰かの持ち物である可能性だってある」 すると、私の前で佐武はまばたきを数回繰り返した。 「……誰かの持ち物? それは校内の誰かということですか?」 「もちろんそうだ。 考えてもみれば、あの父親からの最後の試練が、探して取ってきてハイ終了、なんていう生易しいものであるはずがない。 強者から奪って取ってくるというほうが、最後の試練と言うに相応(ふさわ)しいだろう」 「はぁ…。 しかし、この学校内にいる生徒、教職員合わせて千人以上はいますよ。その中から割り出すのは相当骨がおれる……ってまさか、もう目星はついてるんですか?」 訊ねてくる佐武に、私は頷いた。 「まあ、大体な」
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