弐:紅一点

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「え?え?誰なんです?ていうかどうやって分かったんです?」 食い気味に訊いてくる佐武に、私は前方を指差した。 ちょうど校長の挨拶が終わり、生徒会からの連絡が始まったところ。 「入学式の時から思っていたが、この高校には居るべき人物の姿がない」 今、壇上で生徒会の連絡を話しているのは生徒会副会長だった。 「そういえば、入学式の生徒代表挨拶も副会長がしてましたね」 どうやら佐武も私の言わんとしていることに気づいたようだ。 「そうだ。 私達は一度もここの生徒会長の姿を見てない」 「なるほど。 姿を見せないのは何か事情があるのかもしれませんね。 これは詳しく調べてみる必要がありそうです!」 なぜか張り切った様子の佐武が、拳を握り締めて意気揚々と言い放った。 私はそんな佐武を横目に見ながら、 (ま、泳がせておくか) 情報通の佐武なら、何か掴んでくるかもしれない。 いつの間にか全校集会も終わって周りも騒々しくなり始めたので、私達二人は誰にも見つからないようにそっとその場から姿を消した。
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