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誰もいない空き教室。
佐武は教壇に立ち、黒板に書いた内容を読み上げていた。
「千賀正宗。
この千方学園の生徒会会長。
普段は人前には姿を現さないが、タイマンを申し込まれた時だけ姿を現し、相手をこてんぱんに打ちのめす。
今のところ全戦全勝の無敗の王」
「まるでヤンキー漫画の主人公だな」
「ま、不良高校のてっぺんに立つわけですから、その辺は致し方ない宿命と言えましょう」
そこで、佐武は「おほん」と一つ咳払いをした。
「ここまでは飛鳥殿がお調べした内容と変わりないですね?」
「そうだな。
あまり身のある情報は得られなかった」
「まぁ、そうでしょうね。
この“千賀正宗”という名前の人物は実在しませんですから」
「え?」
さらりと言った佐武の言葉に私は耳を疑った。
「ここの校区の市役所に忍び込んで戸籍を調べましたが、そんな名前の人物は存在しませんでした」
「……どういうことだ?」
「奴は…偽名を使っているということです」
真剣な顔の佐武が答えた。
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