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真顔で言う父親を、私はしばらくしげしげと眺めた。
「…何言ってんの?とうとうボケた?
そもそも私、高校へは行かないつもりだし。バイト先も決まってて、明後日から仕事を始める予定なんだけど」
「ボケてなどおらんし、お前のバイト先には断りの電話を入れた。そして高校への入学手続きはすでに済ませておる」
「あぁ?!何勝手なことしてくれてんだ?」
激昂する私を目の前にしても父さんは涼しげな顔だ。
「というか、普通に考えて、女子の私が男子校に通えるわけないだろ。呆けも大概にしろ」
「問題ない。既に学校側に話はつけておる。
そこの校長には特例でお前の入学を許可してもらった」
「………」
何かを言い返そうとして言葉を飲み込んだ。
「そんなことできるわけないだろ」と突っ込んでやりたいとこなのだが。
侮るなかれ。
この父親、只者ではない。
百地三太夫。
伊賀流忍術の祖とされ、伊賀の三代上忍の一人でもあった初代から数えて何十何代目かの百地宗家の当主。
日常に溶け込みながら、諜報活動から破壊、隠蔽工作まで何でもこなす。
不可能を可能としてしまえる陰の権力者。
忍者が衰退しきったとされる現代においても、未だバリバリの忍者であった。
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