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「……最後の…試練?」
「そうだ。
明日から通うその学校のどこかにある秘宝を探し出して、持ち帰って参れ。
それを遂行出来れば、独り立ちを許す」
「……え?」
思わぬ言葉に、私は驚いた。
独り立ちとは、父さんとは離れ、主君と決めた者の元で、一人の忍としてその命令に従って生きていくことだ。
内容としては隠密行動が多く、表立った仕事ではないため、危険を伴うこともある。
「お前は今までわしが課してきた様々な厳しい鍛錬に耐え、忍術を修得してきた。
お前に教えるべきことは全て教えてきたつもりだ」
「………」
その言葉に私は今までの日々を思い返した。
酸素の薄い高地でのロッククライミング。島から島までの遠泳。山奥の寺に籠っての修業。
普通とかけ離れたその鍛錬は、私が私自身を守れるようにするためのものだと知っている。
私の母さんも忍者だったらしいが、私がまだ物心つかない頃に亡くなった。
その時から、父さんは男手一つで私を育ててきた。
母さんのように命を落とさぬよう、強い忍者にするために。
父さんは続けて言った。
「だがいつまでもわしに付いていては駄目だ。
お前はもう今年で十六。
自らの道を自らの足で歩いていかねばならぬ。
よって、わしからお前に課す鍛錬は、これを以て最後としたい」
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