壱:男子校へ入学

2/4
前へ
/127ページ
次へ
「……誰だてめぇ?」 そう言いながら、思わずその男を睨み付けた。 私に気づかれず私の横に立つとは、只者ではない。 「え?もう忘れちゃったんですか?俺のこと…」 その男は見るからに、しゅん、と項垂(うなだ)れる。 そこでようやく私はその男のことを思い出した。 「…お前…佐武(さたけ)か?」 「そうですそうです! 良かったぁ。忘れられてなくて…」 その男は心底ほっとした様子で胸を撫で下ろした。 彼の名は藤林佐武(ふじばやしさたけ)。 私と同い年であり、家系は違うものの私と同じく伊賀忍の末裔。 幼い頃、修業や鍛錬の際に一緒になることが多かった。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加