294人が本棚に入れています
本棚に追加
宙は深いため息を吐くとみのりの頭をゆっくりと撫でる。それは壊れ物を扱うように優しく。
「…ごめんね。」
哀しげに一言告げ、ジッとみのりを見つめた。
何に対してのごめんなのだろうか。彼にとっては色んな意味が含まれているんだろう。
「ほんと、アイドルとの恋愛なんて大変だよ。普通の恋愛とは違う。」
「…」
「でも…後悔はしてないよ?」
その時のみのりは優しく、幸せに満ちた笑顔を宙に向けた。宙はみのりの表情を見てハッとしたが、すぐにこちらも微笑み返した。
「だって、大好きな人との間に出来た子供がいて、そんな彼は日本中の女性を魅了しちゃうようなアイドルで、普通の生活なんて望めないし、困難が多いけど…」
「…どうしても、忘れたり出来ない存在で、側に居たいって思ってる。」
「ファンだからとかじゃなくて、宙が好き…。」
ここまで言ったみのりの目には薄らと涙が浮かんできていた。宙はそんなみのりにどうしようもない愛情が湧き上がり、ギュッと抱きしめた。
「…ごめんね、困らせちゃったよね?」
宙の胸元に顔を埋めて、啜り泣くみのり。
「…むしろ、嬉しいよ。迷惑ばっか掛けて、負担かけて、どうしようもないこんなオレをこんなに想ってくれてんだよ?」
宙はみのりの顔を上げるよう伝えると、瞳から溢れ落ちている涙に口付け、涙を親指で拭いてやる。自然と絡む視線から逸らせず、2人の顔が徐々に近づく。
「ねぇ〜、ママ泣かしたらダメだよ!」
不意に聞こえた声に2人で顔を向ければ、くまのぬいぐるみを抱えた愛がこっちを見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!