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お風呂から上がってきた2人はほんのりと顔をピンクに染めていて、愛は濡れた髪のまま、ドライヤーを手に宙の元へ行くと、それを宙に渡して髪を乾かして欲しいと催促した。
温風が柔らかい髪を撫で、気持ち良さげに大人しくしている愛の姿をみのりは羨ましげに眺めていた。そんな視線に気付いたのか宙がこちらを見て鼻で笑ってみせる。
ドキッとして顔を隠しながら、首にかけてあったタオルで濡れた髪を拭く。
「終わったよ?」
宙の膝の上でいつの間にか丸くなった態勢になっている愛に声をかけたが返事はなく、グッと体を折り、愛の顔を覗き込めば、スヤスヤと眠ってしまっていた。
「みのり、寝ちゃったよ?」
宙の声に振り返れば、そこには膝の上で眠っている我が子の姿。宙がそっと愛を抱き上げたが起きる気配はない。
「ちょっと待って!布団敷くから!」
パタパタと寝室に敷布団を敷き、そこに置いてもらうようにつげ、掛け布団を掛けてやる。
愛の寝顔を少し眺めてから、向かいの部屋に行けば、ドライヤーを手にした宙が胡座をかいた足をポンポン叩いていた。
「(もしや、来いってこと…)」
ゆっくりと近づき、宙に背を向けてそこに座ると、温風が濡れた髪を撫でる。宙の細長い指がみのりの髪を解いていく。
人にドライヤーをしてもらうなんて美容院に行った時くらいだが、やってもらうと気持ちよくてついウトウトしそうになった。
「…はい、終わったよ。」
「…ありがとう。」
髪に指を通してみたが、しっかりと乾いており、サラサラだった。
「人にしてもらうのって気持ちいいね。」
「そう?」
ドライヤーを片付けて、みのりを背後からギュッと抱きしめた。
「ーいい匂い…」
「お風呂入ったからね。」
しばらく、みのりの髪から匂うシャンプーの香りを堪能していると、久々に触れた温もり、匂い、身体に腕の力を込めた。
「ーごめん、限界かも…」
「えっ?」
宙の言葉を疑問に思い振り返ってしまったみのり。すぐ近くにあった宙の顔はみのりの唇目掛けて一瞬で間を詰めるとそこに口付けた。
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