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天馬の発言にポッと顔を赤くしたみのり、
不意に顔を上げた天馬に見られまいと、顔を背けるがみのりの頬に天馬の手が添えられた。
「こんな気持ち…初めてなのに…悔しいな…」
ポツリと吐かれたその言葉はみのりの耳にもしっかりと届いていた。首を少し傾げていれば、天馬の視線と絡み合う。
「ー…すみません、先に行きますね。」
逸された視線にドキリとしたが、哀しげにバックヤードを出て行く後ろ姿をただ見ていることしか出来ないみのりは自身の身支度を整えるべく、更衣室へと向かった。
ーーーーーーー
天馬にホールの作業を任せて、みのりはキッチンで本日の仕込みを始めていた。
お互いに無言のまま着々と作業は進んでいき、気づけば開店時間に。
なかなか来ない客足にボーッと窓の外を眺めてみる。行き交う人はなく、ただ静かな時間が流れていく。店内で流れる有線に聞いたことあるなとかないなとか思っていると、天馬が近づいてきた。
「…」
しかし、特に何も話しかけられることはなく、
お互いに沈黙が続いた。
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