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「香ちゃん。今日は重役出勤してきたなぁ」
昼休み、席を立とうとしたとたん、がしっ、と後から押さえこまれた。
「放せ円城寺っ」
ヘッドロックする腕を振り払って立ち上がると、円城寺の首を締め上げた。
「今日はついてねーんだよ!食堂行こーぜ、食堂」
「弁当は?」
「おふくろも寝坊して、なし。朝も食ってねーんだ。ラーメンと焼飯食おっと」
円城寺と並んで食堂の席を確保すると、俺はラーメンと焼飯を持って席についた。
「そーいやさ、朝会った妙な女って話、最後まで聞かせろよ」
きつねうどんをすすりながら、円城寺が休み時間に話した続きを急せた。
「あの話?そいつが言うには、魔女らしいんだけどさ、今時いると思うか?魔女だぜ?」
ラーメンをすすって、俺は一時間目を完全にぽしゃった恨みを込めてぼやいた。
「魔女の宅〇便じゃあるめーし!」
まったく、どんな方法で隠れたんだか。どこ探してもいなかったし、気味悪いったらありゃしねぇ。
「どんな格好してた?顔は?」
「見たこともないセーラー服でさ、フツーの女子高生って感じ。髪がふわって背中くらいまであって、顔は…まあ、可愛いほうだったかな?」
「おいしーじゃねーか」
「…うどんが?」
「阿呆。なんでそんなセーラー服の女子高生と、朝から待ち伏せされてふてくされてんだよ、贅沢者」
「おまえ、人の不幸を楽しんでないか?」
「人のフコーは大好きサっ」
「懐かしい歌ってんじゃねーよ。あーあ、今日の朝連サボリになるし、体調崩したとか言って、放課後もサボっちまおーかなぁ」
ここは無難に、家に直行したほうがいいかもなぁ。あの口調だと、また会いそうな感じだし…。出来れば二度と逢いたくない。
ばくばくと焼飯を口に運びながら、パックの烏龍茶で流し込んだ。
「いーのかぁ?サッカー界の新星ともあろー柚木香くんが、さーぼーりーだーなんて」
ふざけた口調で言った円城寺に、俺は慌てて口を塞いだ。
「いーかげんやめろよ、新星なんて一年もたちゃ…」
自分の言った台詞に、びくっとした。
確か、FWだった佐竹先輩が骨折して、補欠だった俺がFWに抜擢されたのは…ほとんど、一年前!
『今のままのあなたでいるか、昔のあなたに戻るか』
あの女はなんて言った?去年の契約、って…まさか、俺は…! ?
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