魔女と痩せた黒猫

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魔女と痩せた黒猫 キャラクターイメージ e4ab6652-86d1-4866-ba5c-1c196090c50a柚木 香(ゆずき かおる) a3cf10b3-6053-4316-b476-fe25f9ebf69c高天 早紀(たかま さき) ワイフラボさまで作成しました。  魔女と痩せた黒猫           西の茶店               その日まで、俺は自分自身を疑うなんてしたことはなかった…。  そろそろ日も暮れるのが早くなってきた十月。一年の全国大会の選抜以来、レギュラーに居座っている俺は、朝も放課後もサッカーに明け暮れて過ごしていた。  妬みで「サッカーバカ」と言われようと、レギュラーになれたどころか、『期待の新星』と新聞にまで載ったことが、嬉しくてたまらなかった。  それまでは、いくら熱血サッカー少年をやっていても、いつも補欠止まりでいまいち冴えない影だった。これで力入れなきゃ、本当のバカだ。  その日も汗と砂埃まみれになって帰って来た俺に、母さんが汚い捨て猫でも見るみたいに、「先に風呂に入ってちょうだい」と、リビングから俺を追い出した。  何か一つ脱ぐたびにパラパラと落ちてくる砂に、ヤバイな、と顔を顰めている時だった。 「手紙が来てたから、机に置いておいたわよ、香」  ドアの向こうで母さんの声がして、俺は砂がバレたのかとギクッとした後、なんでもないように答えた。 「サンキュー。風呂出たらすぐ飯にしてくれる?腹減っちゃってさぁ」  はいはい、と呆れた声で返事が帰ってきて、俺は誰からの手紙かも考えず、頭からシャワーをひっかけた。 「そーいや、手紙が来てるって? 」  シャワーを済ませて自室に帰り、机の上に置かれたワインレッドの封筒に目をやった。  ダイレクトメール…?違うな、なんだよこれ、猫模様の消印?  切手も何も貼っていない封筒に、くっきりと捺された場所も日付もない消印は、見たこともないひょろりとした猫の模様だった。  痩せた黒猫の消印に、パソコンの宛名書?  何となく気味悪いと思いながらも、好奇心の方が強くて、俺は丁寧にはさみで封を切った。  中は封筒と揃えたように、微妙に色の違うワインレッドで、宛名書きと同じでパソコンで打たれていた。  シンプルに折られた便箋を広げ終わると、真ん中に寄せたように並んだ短い文章が、よけいに気味が悪かった。 『柚木香さま  魔女契約の有効期限は一年間です  失効と再契約につき後日お伺いします                高天早紀』 「魔女!?」  契約の有効期限だの、失効だの、再契約だの…おまけに、《高天早紀》って、誰だよ!?  じっくりと便箋を見入ったものの、悪戯にしては凝っている。          「かおるー!何してるの、ご飯が冷めるわよー!」  母さんが呼ぶ声がして、俺ははっと我にかえった。  イタズラだ、イタズラ!消印だって、こんな模様のスタンプでも買ったんだろ!俺がなにを契約したって言うんだ!  そう決め込んで、俺は便箋を封筒に戻すと、机の引き出しにしまい込んだ。  後で捨てればいいや!  ジーンズをはいて手早くパーカーを引っ掛けると、俺はばたばたと階段を降りていった。
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