高校受験

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心に穴が開いたような体験は後にも先にもその時しかない。 昔から物分かりは良い方で、勉強に関しては少し考えれば大抵のことは理解できた。 それは中学にいっても変わらなくて、真面目に勉強しても勝てないやつはいたけれど、学年でもある程度上にいることに安心感を得ていた。 そう、たぶん心のどこかで自分は選ばれた人間だとでも思っていたのだろう。 自分が望んだままの人生を過ごせると、とんだ重い違いをしていたのだ。 同じ塾には、自分より要領が悪くて、少し点数が低い少年がいた。 同じ高校を目指していることもあって、僕とその少年とあと他の数人とでよく一緒に勉強をした。 口ではともに頑張ろうといっていた。 いや、本心でいっていたつもりだったけど、少し出来の悪いその少年を見て、僕は安心していた。 最低だとも思うけど、そう思うことが心のゆとりをもたらすことができた。 彼と僕との違いは要領の差ではなく、最後までにやりきる力だと気付いたときには、遅すぎた。 結果として彼は高校に合格し、僕は落ちた。 母さんは油断していたとか、調子が悪かっただけだと慰めてくれた。 そうではない。 そうではなかったのだ。 湧き上がるのは激しい後悔と黒く歪んで見える世界。 すべて夢であることさえ願った。 逆によくここまでのぼせ上っていたのだろうと今では思う。 間違いなく、生まれてから初めての感情が僕を襲った。 たぶん俺はあの日を一生忘れないだろう。
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