54人が本棚に入れています
本棚に追加
01
「……それでね、まなには好きぴの担当がいるの。名前は零士って言うんだけど、零士は身長が高くて特別扱いしてくれて、何より顔が良いの。は〜マジ担当しか勝たん!」
開放的な吹き抜けと螺旋階段。天井には輝くシャンデリア。
白で囲まれた空間の中で存在を主張する、大きな暖炉。そのそばで、ベルベッドのソファに座る1人の女。
ナメクジのような涙袋と白目を埋め尽くすようなカラーコンタクトが特徴的なその女は、テンション高く声を弾ませる。
「これはね、この間シャンパン下ろした時に撮ったツーショ。やばいかっこ良くない?」
女はそう言って身を乗り出し、向かいのソファに姿勢良く腰掛ける男へとスマホを突き出した。
画面に映るのは派手髪にブランド物で身を包む、いかにもホストといった風貌の男―――女曰く“担当”
「素敵な方ですね」
女の言葉を肯定し、穏やかに微笑んでみせる男。
女はそれに見惚れること数秒、はっと意識を取り戻す。
「……お、お兄さんもさぁ。顔……すごい良いよね。
まあ、まなに取っては零士がいちばんだけどっ」
男はとても美しかった。
浮世離れした美しさがどこか妖しい魅力をかき立て、見る者の目を惹きつける。
「ありがとうございます。……おや。すみません」
その時どこからともなく現れた1匹の猫が、男の膝にひょいと飛び乗る。
毛並みの美しいロシアンブルー。首輪の鈴が可憐に揺れた。
「それ、お兄さんの猫?」
「ええ、そうです」
女からの質問に、男は猫を撫でながら頷く。
猫はその大きな瞳で女を見つめ、気に入らなかったのかふいっと顔を背けた。
「ふーん。それでさぁ私、お金が必要なの。
今月零士をトップ5入りさせるって約束しちゃったけど、このままじゃ目標額に間に合わなくて」
そう語る女の袖口からは、夥しいリストカットの傷跡が覗いている。
そして女は、少し声を潜めるようにして尋ねる。
「……ねえここって“若さ“を買い取ってくれるってほんとなの?」
男は変わらぬ笑みのまま答えた。
「……ええ、本当です。
お望みとあらば貴方の若さを買い取り、それに見合った報酬をお渡し致します」
最初のコメントを投稿しよう!