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男からの返答に、女は興奮したように声を上げる。 「やっばぁ。掲示板に書いてあるのって嘘じゃなかったんだ……!」 「左様でございます」 「ええすごーいすごーい。なんか絶対怪しいし、どうせ虚言癖ブスの妄想だと思ってたのに。 でも若さなんてどう売るの? てゆーか売ったらどうなるの? それと……いくらで売れるの?」 「はい。何年分売るか決めた上でこちらの契約書にサイン頂くのみです。後はこちらにお任せください。 お売り頂いた分だけ外見年齢上は歳を取りますが、寿命や健康状態には影響ありませんのでご安心を。 ちなみにお客様ですと、買取価格は1歳あたりこちらのお値段となります」 男は矢継ぎ場の質問に丁寧に答えながら、素早く電卓を叩いて女に見せる。 「えっ、いちじゅうひゃく……たった1歳でそんなに貰えるの!?」 「はい。お客様はお若くていらっしゃいますので、その分買取も高価となります」 伊藤愛菜(いとう まな) 20歳 2人の間にある円形のテーブルには、女の氏名と年齢が確認できる身分証が置かれていた。 「んんん……見た目年取るのはやだけど……好きぴのためだもん。とりあえず5歳分くらい売っちゃおうかな」 「かしこまりました。では5歳分ということで―――報酬はこちらの金額になります。 いかなる理由があろうとも契約後に年齢を元に戻すといった対応は致しかねますが、よろしいでしょうか。ご了承いただけたら、契約書にサインを」 男は羽ペンでサラサラと書き入れた後、その契約書を女に向けて差し出した。 「うん、わかりました……大丈夫」 女は少しの逡巡の末頷いて、ペンを手に取る。
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