共犯の足跡

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共犯の足跡

 走る。薄暗い森の中を、時々振り返りながら。  後ろからは盗賊たちが追ってくる。身なりのいい少年たちを逃すものかと。  従者、オーウェン・コックスと、同い年の主人、コンラッド・ブライトウェル。2人は訳あって遥か遠くの王都へ向かっている。途中で馬車を捕まえる予定だったが、それよりも前に盗賊に襲われ、逃げている真っ最中だ。  普段遠出する時は大人の警備がついている。いかつい騎士たちにわざわざ喧嘩を売ろうという命知らずはいないから、ここまで追い詰められたのは初めての経験だ。腰に下げた剣がこれほど邪魔だと思ったことはない。  しかし約束したのだ。2人で必ず王都に辿り着くのだと。  オーウェンは剣を左手で押さえ、隣のコンラッドの様子を見ながら、走る。2人とも体力には自信がある。不健康そうな盗賊たちとの距離は徐々に離れている。  しかし、草に隠れて見えなかったのだろう。コンラッドが木の根につまづいた。 「うわっ!?」 「坊ちゃん!!」  オーウェンはすぐに足を止め、反動でよろけながら、転んだ主人の元へ戻る。運の悪いことに、コンラッドの足は見事に根っこと地面の隙間に引っかかってしまい、すぐには抜け出せない。  しかしそうしている間にも盗賊たちが迫っている。獲物が足を止めたのをいいことに、1人が弓を構えたのが見えた。  オーウェンは躊躇わず剣を抜いた。  実戦で抜くのは初めてだ。しかし日々の訓練の成果と、主人を守らなければという意思が、迷いなく手を動かす。  ほんの数秒後、オーウェンの足元は血溜まりになっていた。
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