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赤ずきんの話 2
次の満月の夜。
戸をコンコン、と叩く者がいる。開くと、そこには蒼白の顔に返り血を浴びた赤ずきんと、白銀の狼がたたずんでいた。
「約束どおり、祖母は死に猟師は私が殺しました」
「結構、結構。確かにお代はいただいた。念願通り二人で楽しく暮らすが良かろう」
「あの」
躊躇いがちに赤ずきんが問う。
「私達が消えるということは、『赤ずきん』という物語はどうなるのですか?」
「何を今さら?元の結末を覚えているものはもういない、別の話になるか消えるかだ。どっちにしろお前たちに何の不自由もあるまい、二人でお幸せに」
なぜ浮かない顔をしている?不安げな二人を追い立てて戸を閉めた。数多ある物語の一つが消えたとて、私にはなんの問題もない。
ーかくして、「赤ずきん」の物語は市井から消えた。「なんだっけ、狼の出てくる物語があったような気が・・・」人々の心にわずかな断片を残して。
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