赤ずきんの話 3

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赤ずきんの話 3

 赤ずきんが消えて数年後。 再び戸を叩く者が現れた。あのときの、白銀の狼だった。 「赤ずきんは?一緒じゃないのか?」 狼は涙を目に溜めながら呟いた。 「死にました」 「へえ?幸せだったろうに。何があった?」 「幸せが、怖くなったのです。私達の幸せは、物語を一つ犠牲にして成り立っていたのです。赤ずきんの家族も他の登場人物も浮かばれません。彼女はその事実に耐えられませんでした」 「自殺したのか?」 狼が悲しそうにかぶりを振る。 「私が食べました。『貴方の血肉にして欲しい』、それが彼女の最期の言葉です」  そうか、赤ずきんは外れた輪廻にまた戻ったか。 「狼、お前はどうする?」 「欠片になった物語を集めます。何度猟師に殺されても、私を愛してくれたあの赤ずきんが現れるのを待ち続けます」 静かに、力強く言って狼は一礼した。走り去った狼は今どうしているだろうか。  次も再び恋に落ちるだろう。そのときにどうするか、別の解を見つけるだろうか。人間の葛藤も矛盾も善も悪も清濁併せ呑んだ物語はいつしか己の道を行く。また戸を叩く者が来るまでひと眠りするとしよう。 ー私?私の名前は、誰も知らない。
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