それは幸運だった

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私は猫である。 名前は "一応" ある。 どこで生まれたかも知っている。 が、それはキギョーヒミツというやつだから教えられない。 名前は多分秘密じゃないから教えよう。 「魚」の「名」と書いて「イオナ」と読 む。 何故"一応"と付くのかと言うと、それは以前いた所で呼ばれていた名前だからで、今回正式に飼い猫生活を始めるにあたってまだ名をもらっていないからである。 そういう意味では "名前はまだない" 飼い主は私と同じか少し上くらいの女でハトリという。 普通は猫と人間の年齢を比較して言うことはないが、私は普通の猫ではない。 というか猫ではない。 むしろ「私は人間である」と声を大にして言いたい。 とはいえ猫の声帯でそんな事が言える訳もなく、チャレンジしてみたところで「にゃぁ」というか細い(・・・)音しか発せられないのが現実だ。 猫の体というのは不便極まりない。 自称・人間の私が面倒な体で普通の猫として生活しているのには深くて悲惨でややこしい訳がある。 しかし今は語るまい。 私がこれから語るのは一匹の猫と飼い主達のほのぼのライフなのだ。
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