それは幸運だった

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夕陽 ちょっとゴージャス過ぎではないだろうか。なんたってお天道様だ。 確かに可愛いが名前負けしそうな気がする。それに太陽はホカホカどころじゃないと思う。むしろ熱い。また形容詞変わってるし。 「ふふふ。今日からあなたは夕陽よ。改めて宜しくね、夕陽!」 ハトリに満面の笑みで言われると文句が言えなくなる。 言ったところで通じないけれど。 「良かったね、決まって。やっぱり突拍子もないけど良い名前だと思うよ。ミケやタマや名無しよりずっとね」 まぁ⋯⋯確かに。 つる坊の言葉は妙に説得力がある。 不釣り合いな気もするが、良しとするか。 これでやっと3日間続いた鬱陶しい会話から解放される。 思わず鳴くとハトリが満面の笑みでこちらを見た。 「あ、鳴いた!ねぇ今の『気に入った』って意味かな?」 「ご飯ねだってるだけじゃないの?」 「も〜、つる坊ってば何でそういう事言うかなぁ?可愛くな〜い」 「はいはい。じゃあまた明日ねハトリ」 つる坊はにこやかに手を振り帰っていった。 ハトリは私の隣に座り頭を撫で、1人と1匹は小さな背中を見送った。 そういえば何故彼は玄関から出入りしないのだろうか。来る時も帰る時もいつも縁側からだ。しかもサンダル。 そんな疑問を持っていても猫の体では問いかけることが出来ないのが残念だ。 そして私がまだ昼ご飯を頂いていない事を伝えられないのは残念どころの話ではない。死活問題だ。 「はーーっ、一件落着。やっとスッキリしたわ」 言葉通りスッキリした顔で寝転ぶハトリに 「にゃー……」と空腹っぽい声で鳴いてみた。 「なに?つる坊が帰っちゃって寂しいとか?」 やはり「にゃー」だけでは伝わるわけがない。
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