村娘と『運命の王子様』

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 アーヴィンが王都へ行かなくて良かったなって思う。  一方で、アーヴィンがあんまり嬉しそうだから、あたしはつい問いかけた。 「どうかしたの?」 「ローゼが嬉しそうで、私も嬉しくなったんだ」 「あ、うん。アーヴィンが村へ残ってくれて良かったなって思ってたの。ねえ、アーヴィンは、これからも村にいてくれる?」 「そのつもりだよ」 「良かった。ずっとずっと居てね。どっか他の所へ行っちゃ嫌だからね」 「行かないよ。私はずっとこの村にいる」  彼の返事を聞いたあたしが頬を緩ませる。同時に、アーヴィンの手には力が入った。  そこであたしはようやく、アーヴィンと手を握りあったままだってことに気が付いた。 「あっ、ご、ごめんね!」  慌てて離そうとしたあたしだけど、アーヴィンは離さない。 「ローゼ、聞いて欲しい。私がこの村に残りたいのはね、ローゼがいるからだよ」 「……えっ?」  手を強く握ったまま、アーヴィンは真剣な表情であたしの瞳を覗き込んでくる。 「ローゼはきっと私を見ていないと思っていた。でもそうではないのなら、私にも少しは希望があると考えて良いのだろうか」  アーヴィンが言うのはきっと、さっきレオンの言ってた「他の男をアーヴィンと比べまくってた」って話……かな?  まったく、レオンったら、余計なことをっ! どうしよう、なんて返したらいいの?  おたおたするあたしを見ながら、アーヴィンは言った。 「私は、ローゼが好きだ。友情だけではなく、恋をする相手として」  その突然の告白にあたしの頭は真っ白になる。  でもあたしの心は、頭を置き去りにして勝手にしゃべりだした。 「あのね、あたし、外へ出てやっと分かったの。あたしはアーヴィンのことが好き。本当はずっとずっと、アーヴィンに恋してたの」  あたしの言葉を聞いたアーヴィンは、もう一度笑う。  それは、今まで見たことないほどに嬉しそうで、幸せそうで、そしてとってもとっても、甘い笑顔だった。
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