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剣の……ううん、聖剣の言葉を聞いてあたしは絶句する。
この世で聖剣を知らない人なんていないわ。
世に蔓延る魔物を倒すため、神によって作り出された聖なる剣。
神殿の教えにだって出てくるし、聖剣を手にした人が強い魔物を倒した物語は本になってるもの!
呆然と見つめるあたしの様子に満足したのか、聖剣は自慢げに語りだした。
【お前の『魔物を倒したい』という思いはこの世の誰より強かった。よって、聖剣を持つに相応しいと俺が判断したんだ。お前が承諾するなら、今日から俺はお前のものとなる】
「……え……嘘……。あたし……魔物と戦うの……?」
【確かに信じられないだろうし、いきなり聖剣で魔物を倒せ、なんて言われて不安だろうがな。でも俺の指示に従えば――】
「――った」
【ん?】
あたしの声は思ったより小さくて、剣のところまではうまく届かなかったみたい。もしかしたら、うつむいて震えてるせいなのかも。
【どうした? 怖いのか? 大丈夫だ、俺が――】
「……やった……」
【は?】
「やったわ!」
顔を上げる今のあたしは、きっと世の中の誰より。ううん、何より。
もしかしたらだけど、地を照らし続けるあのおひさまよりも、輝く笑顔を浮かべているかもしれない!
「聖剣があれば魔物の心配をしなくて済む! 一人旅も怖くない!」
【なに?】
「あ、あたしは……これで……」
あたしは握りこぶしを突き上げる。
「これで村から出られる! 『運命の王子様』を探しに行くことができるのよ!」
【はっ……? 運命の……? お前、何を言って】
「ありがとう、ありがとう! あたしはローゼ。ねえ、あなたのことはなんて呼んだらいい!?」
【え? あ、俺はレオンと――】
「レオン! よろしく、よろしくね!!」
【あ、ああ?】
戸惑うレオンの声を聞きながら、あたしは握手の代わりに柄を握ってぶんぶんと振った。
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