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翌朝。
あたしはウキウキしながら、出発前に神殿のアーヴィンへ挨拶に出かけた。
「おはよう、アーヴィン。これから出かけてくるわ!」
「おはよう、ローゼ。どこへ行くか決めたのかい?」
「うーんとね。色々考えたんだけど、あたしは旅の初心者でしょ? 今回はあんまり遠くまでは行かず、付近の町をいくつか回ってくる程度にしようかと思って」
あたしが言うと、アーヴィンはいつもの穏やかな笑みでうなずく。
「それがいいね。……ああ、魔物を倒したら、きちんと神殿で申告するんだよ。報酬が出るからね」
「うん、分かった!」
「レオン。ローゼをお願いします」
【任せとけって】
不思議なんだけど、レオンの声が聞こえるのはあたしとアーヴィンだけみたい。
この聖剣を持つことになったあたしはともかく、なんでアーヴィンに聞こえるのかは不思議だったんだけど
【おそらく、俺が現れた時に居合わせたからだろう】
レオン曰くそういうことらしい。
まあ、あたしだけにしか聞こえてなかったら、自分の頭がおかしくなったと思って終わってたわね。アーヴィンにも聞こえてたのは結果的に良かったなぁ。
「じゃあね!」
神殿を出たあたしが、今日の天気みたいに晴れ晴れとした気持ちで大きく手を振ると、アーヴィンも肩の辺りまで手を上げて振り返してくれる。
「本当に気を付けるんだよ」
「うん! ――きっと『運命の王子様』を見つけて、一緒に戻ってくるから!」
あたしの言葉を聞いたアーヴィンは笑顔を見せる。
……なのになぜかあたしは「アーヴィンがとても寂しそう」なんて思ってしまった。
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