村娘は初めて違う町の壁を見る

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村娘は初めて違う町の壁を見る

 村を出たあたしはウッキウキで街道を進む。  村の外には町へ通じる大きな道があって、道中ではやっぱり魔物が出てきた。  最初は怖かったけど、1体倒したら割と度胸がついた。  もちろん、この剣のおかげ。  今までの人生で、あたしが剣に触ったのなんて片手で数えるくらいよ。  なのにすっごくうまく戦えるの。  さすがに聖剣ってだけあるわね。  適当に振ってるだけでバシッと当たって、ズバッと切れちゃうんだから!  もしかしたらあたし、熟練の剣使いだったのかもって勘違いしちゃう! 【ま、この俺が加護を授けてやってるんだから当たり前だな】  レオンは妙に得意げだったけど、これは確かに言うだけのことあるわ。  なんて、舗装された石畳を歩きながらそんなことを思っているうち、ようやく前方に小さく城壁が見えてきた。 「あっ! ほら見て、レオン! 町よ、町! 見えた! 本当に見えてきたわ! すごいすごい!」 【そうだな。町だな】 「……ねえ。もっと一緒に喜んでよ。あたし、グラス村以外の集落を見るのって初めてなんだから」  だけどレオンは「だからどうした」なんて、そっけないことを言う。 【移動すれば次の町や村に着くのは当たり前だろうが】 「なにそれ。レオンって面白みがないわね。そんなんじゃモテないわよ」 【誰にモテるんだ】 「他の聖剣とか」 【他の聖剣? 何を言ってるんだ、お前は。この俺こそが唯一無二の聖剣なんだぞ。他の聖剣なんてあるもんか!】 「えぇ!」  レオンの声はどこか自慢する感じだったけど、そんなことどうでもいいわ。 「他に聖剣ってないの? じゃあ、レオンには『運命のお姫様』がいないのね! 可哀想!」  レオンからの返事はしばらく戻ってこなかった。
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