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「アーヴィンは、あたしの『運命の王子様』じゃないわ」
【そうか】
レオンにそう答えるあたしの胸は、キリキリと痛む。
……これは、なんだろう。
妙な痛みを感じながら歩くあたしは、町が目前に迫る辺りでようやくひとつの結論に思い至った。
きっとあたしは、アーヴィンが寂しそうだったことが辛いのよ。
だってね。
アーヴィンも、あたしが出かけること自体を嬉しく思ってくれてるに違いないの。あれだけあたしの話を親身に聞いてくれてたんだもの、当然よね。
でも実はアーヴィンも、心の底では『運命のお姫様』を探したいと思ってる。
思ってるけど、村の神官っていう役目を放り出すわけにはいかないから、『運命のお姫様』は探しに行けない。
笑顔だけど寂しそうだったのはそのせいね。
あたしは無意識にそれが分かっちゃったから、寂しそうなアーヴィンを見て辛くて胸が痛いってことなのよ。アーヴィンは大事な友達なんだもの。
アーヴィンの気持ちはとっても良く分かるわ。あたしも『運命の王子様』を探しに行けなくて、ずっと悲しかったからね!
うーん。
彼のために、あたしが何かしてあげられることってないかな……。
そう思った時、あたしの頭にひとつの考えが閃いた。
アーヴィンのために到着した町や村で彼の話を広めてあげるのはどうだろう。
「グラス村にはこんなに素敵な神官がいるんだよ」
って。
もしかしたらその話がアーヴィンの『運命のお姫様』の耳に入るかもしれない!
そしたらきっとアーヴィンの『運命のお姫様』はグラス村へ駆けつけるに違いないわ!
これは、すっごくいい案!
良いことを思いついたおかげで、あたしはとても晴れやかな気分で町の大きな門をくぐることができた。
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