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『運命の王子様』を探すため前を向く
門をくぐって町に入ったあたしは呆然とする。
すごい。
なにこれ、すごい。
【おい】
立ち尽くすあたしにレオンが声をかけてくる。
【道の真ん中でぼーっとしてるんじゃない。さっきから人の邪魔になってるぞ】
「あ、あ、そっか」
あたしは迷惑そうな人々をかき分け、慌てて道の端に寄った。
さすが町ってだけあって、人の多さは村の比じゃない。
門から入ってそんなに時間が経ってるわけじゃないけど、今この時にあたしが見た人だけで、村で一日に会う人の数を軽く超えてる。
おまけに、建物もでっかい!
うちの村だと一番大きいのは3階建ての村長さん家。
なのに、町の建物。これ5階建て!? しかもいくつもある!
「町がこんなにすごいところだなんて思わなかった……ここはきっと、国内でも有数の大都市よね」
そう口に出した途端、レオンに鼻で笑われた。
【この程度なら中規模の町ですらないぞ】
「嘘!?」
【まあとにかく中へ進め。こんな入り口でボーっとしてても仕方ないだろうが】
「う、うん……」
レオンの声を聞きながら、あたしはよろよろと足を踏み出す。
「でも、どこへ行けばいいんだろう……」
【しょうがないな、お前は。いいか? まずは――】
「やっぱり、最初は人が集まるところへ行って『運命の王子様』を探すべきよね」
【違う! 道中で倒した魔物の報酬をもらいに神殿へ行くんだ!】
「……あれ? でもよく考えたら、人が一番集まる場所って門? てことは門の横に立って、いろんな人を眺めていればいいのか」
【そうじゃない! 馬鹿かお前は! こら、戻るな! あああもう、言うことを聞けー!】
でも結局、あたしは途中で衛兵に追い払われてしまった。
ううう、閉門するまで立ってるつもりだったのに!
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