『運命の王子様』を探すため前を向く

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【だから最初に俺が言ってやっただろうが】  ぶーたれるレオンの声を聞きながら、仕方なくあたしは神殿へ向けて歩いていた。  さすがに町だけあって道も綺麗。きちんと舗装されてて、うちの村みたいに石の端っこが割れてるけど放置されてるとか、細い道だとそもそも舗装されてないとか、そんなこともないの。  でも、ここはあんまり大きい町じゃないんでしょ?  あたしにとっては大都会なのに、なんかすごいよね。  村を出る前は『運命の王子様』を探しに行くことしか考えてなかったけど、現実を目の当たりにしてあたしはほんの少しだけ不安になる。  もしも町で過ごしてた人が『運命の王子様』だったら、どうすればいいんだろう。  あたしみたいな田舎娘が、町で暮らせるのかな。  あるいは町で暮らしてた『運命の王子様』が、あたしの村へ来て暮らせるのかな。  そう考えると、アーヴィンは偉い。  出身地までは聞いたことはないけど、あの人は元々どこか違うところで生まれた人。  で、国で一番大きな都市・王都で神官になる修行をした後、うちみたいな小さい村へ来てずっと暮らしてるんだもの。あたしには絶対できないな……。  なんて考えるあたしは、いつの間にか下を向いて歩いてることに気付いた。  こんな弱気なことじゃダメ!  だって、せっかく『運命の王子様』と出会える機会が巡って来たのよ!  『運命の王子様』とはね。目が合った瞬間にドキドキして、お互い一目で恋に落ちて、絶対忘れられない人になるの。  うつむいちゃダメ。きちんと前を見て歩くのよ。  だって通りすがりの人が『運命の王子様』だって可能性があるんだもの!  ぐいと顔を上げたあたしは拳を握り締め、改めて周囲に目を配りながら道を進む。  なんか周りに人が居なくなったなあ、と不思議に思った辺りでレオンがあたしを呼んだ。 【……おい、ローゼ】  彼の声には、うんざりしたような響きがある。 【お前、周りから変な目で見られてるぞ。両手で拳を握って肩をいからせるのは止めろ。それに、ぎらついた目で周囲を睨むな】 「え? なにそれ。あたし、そんな風に見えてるの?」 【見えてる】  レオンは大仰にため息をついた。 【お前が何を考えてそういう格好をしてるのかは知らん。だが今のお前は、喧嘩相手を探す変な女にしか見えないからな】  えーーーーー!!
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