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タナブゥタの伝説・下
日の沈んだ川辺の道にはたくさんの露店が出ていた。
うん、昨日教えてもらった通りね!
「すっごい! こんなにたくさんの出店、初めて見た!」
【洋服焼き、洋服飴、洋服酒、洋服揚げ……なんだこりゃ】
「飲食物だけじゃなくて、洋服自体も売ってるよ。あ、あれ可愛いー!」
【そういう問題じゃない】
ウキウキとするあたしだったけど、対照的にレオンの声はどことなく不機嫌そう。
【まったく、自分が死んだ日に皆が騒ぐんだ。そのお嬢様とやらからすればずいぶんと不愉快なことだろうよ。恋の願いなんざ叶えられるもんか】
「やーね、レオンたら心が狭いわ」
あたしは胸の前でチッチッチ、と小さく指を振る。
「レオンと違って心優しいお嬢様はね。自分が不幸だった分、みんなには幸せになってほしいの。だから恋の願いを叶えてくれるのよ!」
ひとつため息をついて、レオンは黙った。
その様子はなんとなく「処置なし」って感じにも思えたけど、きっとあたしの気のせいなはず。
それに、あたしにはもうひとつ考えてることがあるんだ。
「……あのね」
あたしはレオンにだけ聞こえるよう声を潜める。
「あたし、お嬢様が川に流されて亡くなった、っていうのは嘘だと思ってるの」
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