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うちの大陸は『ウォルス教』っていう宗教があって、各集落には神殿っていう布教活動の拠点がある。そこにいるのが神官様。
神官様になるためには、王都で何年も学ぶ必要があるんだって。だから神官様は豊富な知識を持ってて、みんなから尊敬されてる。
今の神官様は、引退した前の神官様と入れ違いに王都からやってきた24歳のアーヴィン。
頭いいし、穏やかで性格もいいし、何より顔が抜群に良くって女性に大人気……なんだけど、あたしから見ると尊敬する存在、って感じじゃないのよね。
あえて言うなら、お兄ちゃんかな。
でも今じゃ村の中であたしの話を否定せずに聞いてくれるのは彼だけ。
だから、お兄ちゃんというよりも、なんか年上の友達みたいな感じになってきちゃった。
今も、愚痴をこぼしに神殿へ来たあたしのために、お茶を淹れてくれてるの。優しいなあ。
「ねえ、アーヴィン。あたしが『運命の王子様』を探すには、どうしたらいいと思う?」
「そうだね。村の外へ出るのは難しいだろうから……村の男性がローゼの好みに合わないなら、あとは村へ訪れる人から探すしかないと思うな」
「うーん、やっぱりそうなっちゃうよね……でも村へ来る人って言ってもなあ……」
グラス村に来る人なんて、びっくりするくらい少ない。商人たちだって月に一度くらいしか来ないのよ。
こんな村でずーっと待ってても『運命の王子様』には出会えないに決まってる!
……ううん。もしかしたら逆に、こんな村で出会うからこそ『運命の王子様』なのかも。でも、一か月に何人もやってくるわけじゃない人の中に『運命の王子様』がいる確率は、ものすごーく低いような気がした。
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