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『運命の王子様』と『運命のお姫様』
「やっぱり村を出て探しに行くしかないかないのかな。『運命の王子様』」
あたしが憂鬱な息を吐いた時、アーヴィンがお茶と一緒にお菓子を出してくれた。
咲いた花みたいに綺麗な形をしたお菓子。
その瞬間、あたしは顔がほころぶのが分かった。
「あ、このお菓子、町でしか買えないやつ! みんなの間で話題になってて、食べてみたかったの!」
嬉しくなったあたしが横のアーヴィンを見上げると、彼はやっぱり穏やかな声で「それは良かった」って返してくれる。
あたしはお菓子を手に取って口の中に運んだ。
ほろほろと溶けるお菓子の甘さは、くどすぎずにちょうどいい感じ。
最後にお茶で流し込めば、後口はすっきり爽やか。
さすが町のお菓子! 村のお菓子とは全然違ってオシャレ! みんなが話題にするのも納得よ!
「すごい! 美味しーい!」
「喜んでもらえたようだね」
「もちろんよ! アーヴィンありがと! 大好き!」
あたしの言葉にアーヴィンは笑みだけを返して、正面の椅子に座る。
もう一個お菓子を手に取って、あたしはアーヴィンに問いかけた。
「そういえば、アーヴィンはどうして誰とも結婚しないの?」
24歳になってるアーヴィンは未だ独身。
顔は抜群に良いし、性格も……あたしにはちょっと意地悪する時もあるけど、村の人にはとっても親切。
そんな極上の男性だから、何人もの女の子がアーヴィンに告白してるんだけど、全員が玉砕してる。
「もしかしてこの村には、アーヴィンの『運命のお姫様』がいない感じ?」
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