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「……そうだね」
あたしがお菓子を食べながら尋ねると、正面の椅子に座ったアーヴィンはいつもの穏やかな笑みに、ほんの少し寂しさを混ぜてあたしを見つめてくる。
「例え自分が運命だと思っていても、相手が自分を見出してくれないのなら、それは運命ではないのかもしれない」
彼の言葉があまりに胸を打ったので、あたしは思わず食べる手を止めて心の中で彼の言葉を反芻した。
自分が運命だと思ってても、相手が自分を見出してくれないのなら、か。
さすがに神官は言うことが違うわね。なんかこう、すごく深い。
「……いいこと言うわね、アーヴィン」
しみじみと感じ入りながら、あたしは大きくうなずいた。
「うん。本当にその通りだわ。例え運命の相手がいたって、出会えないなら運命の相手になんてなれないもの」
あたしの言葉を聞いたアーヴィンはわずかに目を見開く。やがて深く息を吐いた後、見開いた目を今度は伏せた。
それを見てあたしは確信する。
実はアーヴィンも『運命のお姫様』を探しに行きたいんだ、って。
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