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王都の大神殿からこの村の神殿へ派遣されて来たアーヴィンは、村から出て行くわけにはいかない。
だってうちの村に神官は一人しかいないもの。
たくさん知識を持ってて、相談役にもなってくれる神官がいなくなったら、村はものすごく困っちゃう。
自分の役目をきちんと理解してるアーヴィンは、村の人たちのために『運命のお姫様』を探しに行かず我慢してるの。
だからあたしの気持ちも良く分かるし、こうして相談にも乗ってくれるんだわ!
あたしの状況とアーヴィンの気持ちとを考えているうち、あたしの胸には悔しさとか寂しさとかやるせなさとか、いろんな思いが湧き上がってくる。
思わず立ち上がったあたしは、ぐっと拳を握り締めた。
神殿の天井は高い。
その天井を仰いだあたしは思い切り叫んだ。
「あたしはー! やっぱりー! 村の外へ出たいー! 『運命の王子様』を探したいいいー!」
たいいい……たいい……いぃ……と声が響く神殿の中、あたしはもう一度大きく息を吸い込む。
空が飛べそうなほど息を吸うあたしを見たアーヴィンは、この後のことを察したみたいで耳を押さえる。同時にあたしは建物を壊すくらいの大きな声で叫んだ。
「ちくしょおおお魔物さえええいなければあああああたしの王子様あああああああああぁぁぁ~~~ぁ………ぁ!!!」
叫びながら徐々に体を折って、遂には床を見ながら息が続く限りの声を出し終えた後、あたしは膝に手をつく。
ぜいぜいと肩で息をしてると、どこからともなく男性の声が聞こえてきた。
【その心意気や良し! お前に決めたぞ!】
……ん? 誰?
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