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それにしても、こうして近くで見るとアーヴィンって本当にカッコイイ。
涼やかな目元に通った鼻筋。憂いを含んだ灰青の麗しい瞳に、褐色の髪がさらりと落ちかかって……。
「ローゼ? どこか痛めたのか?」
心配そうにもう一度聞かれて、あたしはハッとする。
やだ。アーヴィンに見惚れちゃってた!
「あ、どこも、痛くない、け、ど……」
「……そうか。ローゼが無事なら良かった」
しどろもどろしながらあたしが答えると、ほっとしたようにアーヴィンが言う。
すると少し離れたところから、やっぱり男の声が聞こえた。
【何やってんだ、お前ら】
アーヴィンの腕の中から顔だけを動かして声の出所を探すけど、他に人なんていない。
ただ、あたしたちがお茶してた机の上に、一振の剣が突き刺さってた。
綺麗な刃は鏡みたいにピカピカ。翼を模した鍔も幾何学模様が刻まれてる柄も黄金色に輝いていて、柄頭には透明な宝石まで嵌まってる。
すごい! なんて綺麗なの!
あたしが呆然と眺めてると、アーヴィンが小さな声でうめく。
はっとして顔を戻すと、アーヴィンは眉間にしわを寄せてる。額には脂汗まで浮かんでた。
「アーヴィンこそ、どこか痛いんじゃないの!?」
「……痛くないよ、平気だ」
そう言ってアーヴィンはあたしに笑いかけてくれるけど顔色は良くない。
きっと今の衝撃でどこか痛めたんだ。だってあたしを庇って、変な体勢になってたもの。
慌てて彼の腕の中から這い出ると、彼は表情をを見せないようにだと思うの。さっと顔を背けた。
何よ、強がっちゃって。……全然、平気じゃないのに。
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