別れ

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 シシトラは早朝の村が好きだった。集落へ出ると、日の出前だというのに村の人間たちは年越しに備え忙しなく活動していた。  老人ばかりであるが、煙のような白い息を吐き皆活発だった。そんな様子を楽しんだシシトラは、お日さまが顔を見せる頃には散歩を終え爺さまの部屋に戻ってきた。  この日の爺さまはいつもと様子が違った。日の出の時間を当に過ぎたというのに、一向に起きてこない。  シシトラは、眠っている爺さまを側でじっと見つめる。暫くして、頬を包み込むように身体を寄せ丸まった。爺さまの顔は冷たくなっていた。 〈爺さま、迎えが来たんだな。人生で俺が出会った人間の中では、爺さまが一番良かった。俺も一緒に行く。いいだろ、爺さま?〉  そう言ったシシトラは、ゆっくりと目を瞑った。
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