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プロローグ
「──今日も嵐が酷いな」
眼前の巨大な砂嵐を見上げ、虎之助はため息をついた。口の中に溜まった砂を吐き出しながら、今日も歩を進める。
ここはニホン──トウキョウ。
かつてはこの国最高の都市部と呼ばれた地区だったが、今は見る影もない。ほとんどが、荒廃した土地と、ほんのわずかなオアシスと、小さな町がぽつぽつとあるばかりだ。
500年ほど前から、「地球温暖化」というもので世界の気温は徐々に上がり、現在の温度は60度を超えるのが日常的になった。
環境に適応できなかった人はどんどん減少し、ヒトは、500年で──ただ1匹となった。
かつて「ドウブツエン」という場所にいた者たちが残ったが、それも……もう数える程度だ。
しかし──獣たちは独自の言語を生み出し、ヒトの真似事を始め──……進化した。
町の外から、今のところ1番近いオアシスも、片道だけでも4時間以上。おまけに交通手段は限られている。
当然、行きたがる者は皆無に近い。
それでは商売に支障がでる──それでもやはり獣たちは動きたがらない。
そんな問題を利用した職業、それが「何でも屋」だ。その名の通り、「何でもとりにいく」ことを主な生業としている。
これはそんな、1匹のヒト──シークインの子孫……の、青年の物語である。
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