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フルーツ
──フルーツ、ね。
「シロ、木が生えている場所を探してくれ」
「なんだって!?」
「だーかーら! 木が生えてる場所──」
「ああもう! バイクを停めてよ‼︎」
シロの不機嫌そうな咆哮に、虎之助は慌ててバイクを停めた。
シロは小さなヘルメットを持って、怒鳴った。
「いつも言うけど! これをつけてると! 聞こえないんだよ!」
──そんなこと言われても。
「ヘルメットをつけないと危ないだろ? それに……」
「なんだよ」
「オーダーメイドだから……! 高いんだぞ!」
シロは深い深いため息をついた。
「じゃあ、なんで聞こえやすいようにしてもらわなかったんだ……」
そ、それは……虎之助は明後日の方向を向いて言った。
「お金が足りなかった」
シロはしばらく黙り込んだ後、言った。
「じゃあ、君がバイクを停めればいいだけの話だね」
虎之助は何も言えなかった。
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